フライヤーが主催するオンラインコミュニティflier book laboでは、さまざまな会員限定サービスを提供しています。その魅力をちょっとだけ体験していただける無料のランチタイムセッションが、2024年12月6日に開催されました。

ゲストスピーカーは、オンライン講座「flier book camp」で講師を務めてくださる松波龍源さんです。松波龍源さんが1月より担当する講座は、題して「仏教思考が導く協調力~より良い関係の築き方~」。

今回のセッションでは、株式会社フライヤーで「flier book camp」企画運営を担当する久保彩のファシリテーションで、プログラムの内容を先取りしてご紹介いただきました!


【スピーカー】

実験寺院寳幢寺 僧院長     松波龍源 師
株式会社フライヤー 執行役員CCO    久保彩 氏

▼セミナーでご紹介した実践講座の詳細・申込みはこちら(12/25〆切)


▼要点

・仏教はもともとビジネスや政治、生活のシーンに活かせるもの。
・私たちの悩みや苦しみは、他者との関係性や未来・過去とのつながりを考える抽象思考能力から生まれる。
・仏教は認識を捉え直し、自分の心と向き合うための一つのツールになる。

私たちの悩みや苦しみはどこからくるのか?

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久保彩氏(以下、久保):まず初めに龍源さんのお仕事の内容についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

松波龍源師(以下、龍源):私は普段僧侶として活動しているのですが、皆さんがイメージする僧侶とは少し違うかもしれません。私はお寺出身ではありませんし、身内にも寺院関係者はおりません。一般家庭で生まれ育ちましたが、様々な経験を通じて仏教の役割や可能性をとても強く感じるようになり、もっと社会で活用されるべきだと思うようになりました。しかし、今の日本の仏教界、寺院・僧侶を見た時に本来の仏教の役割を果たせていないかもしれないと感じたんです。誰が悪いわけでもなく社会全体の構造の問題です。その問題を解決するのが既存の仏教界にいない私の役割かもしれないと思いました。そこで「仏教の社会実装」をテーマに実験寺院プロジェクトを始め、京都にお寺を構え様々な活動を行っております。

久保:実験寺院にはどのような方がいらっしゃるのでしょうか。

龍源:大企業の社長や経営陣の方、起業家の方、新卒社員の方や学生の方など幅広い方々に来ていただいております。

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久保:ビジネスパーソンの方も多くいらっしゃっているんですね。龍源さんは『ビジネスシーンを生き抜くための仏教思考』を出版され、今回のセミナーも「ビジネスに役立つ仏教思考」がテーマですが、仏教とビジネスは一見乖離があるように思います。どのような繋がりがあり、どう役立つのかについて龍源さんの考えを教えていただけますか。

龍源:仏教の開祖であるお釈迦様は、どうすれば苦痛を最小化して幸せに生きていけるのかという人間の生き方を考えて、一つの答えを見出した方なんです。その答えをもとに王様や村の住民など様々な方の悩みや苦しみに寄り添いながら、考え方や行動について対話し続けました。そこで説かれた教えが書き残されて伝わっているのがお経であり、お経に従った考え方や生き方をしようというのが仏教なので、もともとビジネスや政治、生活のシーンに活かすために存在しているものなんですね。だから現代社会においても活かせるはずだと考えています。

久保:龍源さんも多くのビジネスパーソンの方たちとお話されていると思いますが、仕事における悩みや苦痛はどこから来るのか、どうして私たちは悩むのか、仏教としてはどう考えるのかお伺いできますか。

龍源:まず、私たち人間が他者との関係を築きながら生きる種族であることが一つの理由です。例えば密林に一頭で生きている虎や昆虫などは他者との関係性は必要ないですよね。また、人間は抽象思考ができる能力があります。「将来こうなったらどうしよう」「過去にこうだったからきっとこうなるに違いない」など未来や過去を考えることができるんです。この二つが重なって私たち特有の苦痛が生まれる。おそらく自分の死を恐れながら生きている生物は人間以外いない気がします。そこにどう向き合っていけばいいのかを考えたのが仏教だと思っています。

仏教とは、悩みや苦しみとの向き合い方を教えてくれるもの

久保:参加者の方から「仏教は何を目指しているのでしょうか?」という質問をいただいております。

龍源:私が理解している仏教の目標地点は「苦からの脱却」という一言に尽きると思います。よく誤解が起こるポイントなのですが、苦しみがなくなるわけではないんですね。苦しみはあるけれども、その苦しさが心を汚さなくなるという表現がされています。
仏教は様々なバリエーションがあるので、私がお伝えする内容が全仏教をカバーできるわけではありませんし、学者ではなく実践者としての立場からお話させていただきます。また、仏教の教えはとても難しいので私自身もまだわかりきっていないですし、疑問を持って当然だと思って聞いていただければと思います。

久保:仏教でいう「苦」の定義とはどのようなものなのでしょうか。

龍源:まず一つは「望んだことが叶わない」という苦しさです。その派生として「望まないものを強制的に与えられる」という苦しさがあります。仏教は喜びにフォーカスしない特徴がありますが、喜びが得られないのは何かに妨げられることが理由なので、その妨げるものがなければ喜びが得られるはずなんですね。例えば、食事をしたいが虫歯が痛くて食べられないことが苦痛です。しかし歯を治療してもらえば、食べられるようになって喜びを得ますよね。だからまずは苦を取り除きましょうというのが仏教の考え方です。

久保:喜びを目指すのではなく、まずは苦を取り除いていくという考え方なんですね。どのように苦を避けていけば良いのでしょうか。

龍源:残念ながら生きている以上苦しみは不可避なので、それに対してどう向き合うのかを考えるのが仏教です。こうしたらこうなるから嫌だ、という因果関係が見えているのであれば回避すれば良いと思いますが、どうしても回避不可能なものもありますよね。その時に自分の認識の問題としてどのように対処するのかを考えるのが大事だと思います。

一つのツールとして仏教を身につける

久保:今回の講座は「より良い関係の築き方」というテーマですが、どのように進めていくかお伺いできますか。

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龍源:DAY1は「無意識に身につけた認識のとらわれを手放す」というテーマです。私たちは無意識に自分とはこういう人間だ、世界はこうなっている、あの人はこういう人だ、などの認識を持っています。その自分や世界に対する認識をメタ的な視点から捉え直し、相対化してみる。DAY2では、神仏習合の考え方や世界観を再評価してみたいと思っています。DAY3では身体化する技法を体験していただき、最後は皆さんに4ヶ月間を通じて感じたことや見方が変わったことを発表してもらうという進め方です。「聞思修(もんししゅう)」という仏教の伝統的な修学方法があるのですが、まずは「聞」で情報のインプットから始める。インプットした情報について自分で考える「思」。自分なりに納得したことをやってみる「修」。真の知恵はこの3つのプロセスを通じて獲得されるという考え方があります。それに則ったカリキュラムになりますね。

久保:面白いですね。龍源さんはどんな方に今回の講座に来ていただきたいですか。

龍源:緊急・深刻な状況ではない前提で、今「苦」を感じている人、目の前のことに対してどう考えたら良いのか悩んでいる人にはぜひ来ていただきたいです。自分に合うかどうかは別として一つのツールとして持っていただき、必要なシーンが来たら使っていただく。仏教は自分の心と向き合うためのツールでありスキルだと思うので、持っておいて損はないと思います。そんなツールを持ってみようと思う方にも来ていただけると嬉しいです。

久保:ありがとうございます。最後に、受講を迷われている方に対して一言いただけますでしょうか。

龍源:仏教は2500年という長い時間、天才たちが磨き上げてきて多くの方が素晴らしいものとして扱ってきたので、日本文化の基礎を作っているものでもあると思います。「悟らなきゃ」「仏教を信じなきゃ」と固く考えず、一つのツールを持つくらいの感覚でご参加いただけると、きっと何かの役に立つ日が来ると思っています。


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松波龍源(まつなみ りゅうげん)
実験寺院寳幢寺僧院長。僧侶・思想家。

大阪外国語大学(現:大阪大学)外国語学部卒・同大学院地域言語社会研究科博士前期課程修了。ミャンマーの仏教儀礼を研究するうちに研究よりも実践に心惹かれ出家。現代社会に意味を発揮する仏教を志し、京都に「実験寺院」を設立。学生・研究者・起業家・医師・看護師などと共に「人類社会のアップデート=仏教の社会実装」という仮説の実証実験に取り組んでいる。


久保彩(くぼ あや)
株式会社フライヤー  執行役員CCO(Chief Customer Officer) 
カスタマーエンゲージメントDiv ゼネラルマネジャー

大学卒業後、大手メーカーにてシステム開発の企画・開発・PJマネジメントに携わる。その後、総合系コンサルティング・ファームで大手企業の新規事業/新規サービスの企画・立上・展開を担いながらMBAを取得。2020年よりフライヤーの新規事業担当 執行役員に就任。読書の新しい価値を追求するコミュニティflier book labo、本から深く学ぶflier book camp企画運営責任者。
2023年1月よりカスタマーサクセス責任者兼務。
2024年3月よりCCO就任。


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