昨日に続いて「先生」の話。

中学時代、美術を受け持っていた、男の先生。新卒で入職されたはずだから、
10歳上ぐらいか。
ひょろっとした長身で、朴訥な印象のある話し方、温厚な性格でかつユーモアのセンスも
持ち合わせていたので、概ね生徒からの評判は良かった。
多分185センチぐらいはあったかな。

彼の名を、S先生としよう。
S先生はなぜか、柔道部の顧問教師に就かされ、自分より遥かに小さい、けど体重は
先生よりも重い生徒に、あっさり畳の上で寝技を決められたというのが
生徒間で話題になったこともある。

またある時には、身長が150センチちょいの学年主任の女教師に、
生徒の面前で叱られて、その長身がみるみる小さくなっていったことも覚えている。

先生の授業は、指導に際しての制約もあまりなく、作品や課題はわりかし生徒の好きなようにやらせてくれた。雑談やジョークも多く、先生らしさを感じさせない、「歳の離れた兄貴」って感じだった。
そしていつしか僕らは数人で授業外の時間にも、美術準備室(美術室の隣にある、まぁ職員室とは別の、先生の控え室兼用具置き場のような部屋)を訪れるようになっていた。

そこには今では信じられない話だが、アルミの灰皿にシケモクが積み重なり、僕らがいる前でも先生は平気でそこからひょいと一本取り出して火を点けることもあった。流石に酒は飲んでいなかったけど。
学年主任も立ち入らず、あたかも一国一城の主のようにそのスペースにいるS先生は、リラックスモードで、僕たちにいろんなものを見せて、聞かせて、教えてくれた。男子生徒しか押しかけなかったので、たまには下ネタも。
先生はなかでも洋楽ロックに造詣が深く、田舎の中学生にローリングストーンズや、デヴィッド・ボウイ、エルヴィス・コステロなどのちょっとハナタレ小僧には背伸びしないといけないかな?といったアーチストの曲を聞かせてくれ、先生行きつけの、中学からは少し離れた街にある輸入レコード屋も教えてくれた。

後日、生徒だけでそのレコード屋を訪れて、僕と友人のHは、半ば常連客となり訳詞カードは封入されていないけど、日本盤より安く手に入れられる輸入盤を買うようになった。
またある日はバッタリ店内でS先生に出くわしたこともある。
そしていつもの柔和な笑顔と口調で、オーナーと会話を交わすS先生を見て、あぁ、先生はどこに行っても変わらないんだな、と妙に感心したことが今でも記憶に残っている。

そんなこんなで、校内外でも先生との交流が深まっていったある日の、美術準備室にて。

好きなアーティスト、アルバム談義の最中に、先生がレコードを選ぶときの基準として、
・もとより好きなアーティスト
・ラジオや店で聞いて気になった曲(が収録されているレコード)
・友人に勧められたもの

そのほか、

・店でレコードを探しているときに、お目当てのものではなくても
「ジャケットが美しい、目を引かれる、面白そう」なものを偶然手にした時

→このアーティストは知らないし、収録されている曲も聞いたことがないけど、
どんな音を聴かせてくれるか、未知のものとの出会いを楽しむべく購入する

という話をしてくださった。
いわゆる「ジャケ買い」である。

当時は「あぁ、美術の先生だから、そういう選び方があるんだ」
ぐらいにしか受け止めていなかったが、

浅田すぐるさんの「早く読めて、忘れない、思考力が深まる『紙1枚!』読書法」に
選書方法などについて記述があるのを読み、S先生のことを思い出した。
浅田さんの著書の中には、もちろんジャケ買いのことには触れられていないが、
本選びに関して、やってみようか、とふと思ったのだ。
(思うだけでなく、実行しますよ!)

振り返れば僕の書店での本選びは、
「タイトル」もしくは「著者」で惹かれるものをピックアップして、
さらに「後書・前書」、「目次」で絞り込みをかけ、
まれに「Amazonなどのレビュー」を参考にして、レジに持って行くというもの。

100%、左脳優位な選択基準である。

「本のジャケ買い」小説や写真集では、もしかあり得る話かもしれない。

しかしビジネス書でジャケ買い・・・うーん、、、書いている本人が疑心暗鬼w


でもいいじゃない、そういう出会いが「たまに」あっても。

1500円ぐらいの投資で、未知なるものと引き合わせてくれるような体験ができるのだから、と自分に言い聞かせている。

なので、11月最後の週末には、僕の手元には、ジャケ買いをした小説と、ビジネス書が1冊ずつ
置かれることになる。

このブログを読まれたあなたは、普段どんな選書をされるのだろうか?
書店に足を運び、「今すぐ」必要な本の購入以外に、「他に何かいい本はないかな〜?」と探されるとき。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

追伸:「ジャケ買い」については、違うテーマで改めて述べたい。これは、かなり知らない人が多いので面白いトピックであること間違いない。多分。