フライヤーが主催するオンラインコミュニティflier book laboでは、さまざまな会員限定サービスを提供しています。その魅力をちょっとだけ体験していただける無料のランチタイムセッションが、2024年12月20日に開催されました。

ゲストスピーカーは、オンライン講座「flier book camp」で講師を務めてくださる三宅香帆さんです。三宅香帆さんが1月より担当する講座は、題して「人生を狂わす名著を読んで「好き」を言語化する講座 」。

今回のセッションでは、株式会社フライヤーで「flier book camp」企画運営を担当する久保彩のファシリテーションで、プログラムの内容を先取りしてご紹介いただきました!


【スピーカー】

文芸評論家 三宅香帆 氏
株式会社フライヤー 執行役員CCO 久保彩 氏


▼要点

・つい自分がよく使ってしまう「クリシェ(常套句、ありきたりな言葉)」を認識するところから始めよう。
・自分の感想を深掘りして具体的に書いたり、SNSで他人の感想を見る前に自分で言葉にしてみよう。
・感情の言語化は、自分自身のことを考えてケアすることに繋がる。

自分の思いや考えを言語化する意義とは?

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久保彩氏(以下、久保):本日のセミナーのテーマは「自分の言葉で「好き」を言語化する方法」ですが、ここ数年「言語化」というキーワードがとても注目されていますよね。

三宅香帆氏(以下、三宅):そうですね。三省堂の「今年の新語2024」でも「言語化」が大賞に選ばれていました。私も最近『好きを言語化する技術』という本を出版しましたが、「言語化したいけどできない」「どうやって言語化したらいいかわからない」という方も多いと感じています。

久保:方法論だけではなく、聞いてくれる人や見てくれる人、アウトプットする場所を見つけるのも必要かもしれませんね。三宅さんは大学院生時代、『人生を狂わす名著50』の元になるブログを書かれてとても注目されたと思うのですが、どういう気持ちで文章を書き始めたのでしょうか。

三宅:自分の好きな本がニッチだという感覚があったので、普通に伝えるだけだと他の方に興味を持ってもらえないだろうなと感じていました。だから伝え方や言語化の方法など伝える技術を磨こうという思いが最初からありましたね。

久保:三宅さんのご著書でも文章は文才ではなく、ちょっとしたコツで上手く伝わる文章になると書かれていましたが、それは三宅さんの試行錯誤から来たものなんですね。
ビジネスパーソンにとって、自分の思いや考えを言語化できるようになることの意義についてはどうお考えでしょうか。

三宅:他の方が考えていることを言語化したり、自分の思いを言語化して伝えたりすることによって、コミュニケーションがとても円滑になると思っています。例えば、チャットやメールなどテキストでのやり取りにおいても、どう書いたら誤解されないか、受け取る時にどのような点に気をつけたら良いのか、という技術がとても必要だと思います。また、部下へのフィードバックや、面接や商談での自己紹介などでも言語化が役立つと思っています。

私たちは他人の言葉に支配されすぎている

久保:『好きを言語化する技術』に書いてあった「私たちは他人の言葉に支配されすぎている」という言葉が印象的でした。「クリシェ(常套句、ありきたりな言葉)」をやめようとも書かれていましたが、三宅さんが言語化の際に意識しているポイントについて教えていただけますか。

三宅:感想を書いたり、伝えたりする時に「こう言えば何となくそれっぽくなる」言葉があると思います。例えば「考えさせられた」「心に響いた」など、つい使いがちですよね。その言葉自体がだめなわけではないですが、自分がよく使う言葉を認識し、その言葉を使った時に「どこが心に響いたんだろう?」と考えたり、細分化して書いたりするだけで中身が変わってくると思います。例えば映画を見て「深い映画だった」と感じたとしたら、「自分は何に深さを感じたんだろう?」と深掘りしてみる。俳優の演技なのか、何かの台詞なのか、時代背景なのかなど具体的に書いてみるのが大事だと思います。

また、人の感想に影響されないために、SNSを見る前に自分の言葉で感想を書くことも大事ですね。例えばとても面白かったと思う映画でも、他の人が酷評しているのを見ると本当は面白くなかったのかな?と思ってしまうことがありますよね。

久保:普段の行動を変えるのはすぐにできそうですね。自分の感想を記録するのと、人に伝えるのとではまた違ってくるのでしょうか。

三宅:そうですね。自分のために書く文章と人に伝えるための文章は全く別物だと思っています。自分が感想を記録する時は、自分自身の前提知識を知っているので何の説明もいりませんが、人に伝えるとなると色々と説明するべきことがあったり、伝わるように書き方を工夫したりといったことが必要になります。

久保:三宅さんが人に伝える際に普段工夫されているポイントは何でしょうか。

三宅読者をちゃんと設定するのが大事だと思っています。文章だと多くの人に読んでほしい、誰でもいいから伝わってほしいと思いがちなのですが、そうすると逆に誰にも刺さらない文章になってしまうんです。こういう人に読んでほしい、というのをしっかり定めてから書くと、意外とそれ以外の人にも興味を持ってもらえることがあると思います。最初は読者を設定するのが難しいと感じる方も多いと思うので、今回の講座のような伝える相手の顔がわかる場所で練習してみるのも大事だと思います。

仲間と一緒に言語化することで、自分の感情に気づく

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久保:今回の講座では、DAY1で「細分化」、DAY2で「感情を言語化」、DAY3で「長文レビュー」というステップで進めていきますが、三宅さんは皆さんと一緒にどのようにやっていきたいとお考えでしょうか。

三宅:少しずつステップを踏んで、皆さんで感想をシェアしながら進めていきたいと考えています。いきなり文字数をたくさん書くのではなく、最初は一行でも良いので言語化してみるところから始めたいと思っています。

自分の感情を言語化できるようになると、他人に感情をぶつけずに済むのでより生きやすくなると思います。また、日々忙しいと自分の感情がわからなくなってきますよね。そんな時に一旦立ち止まり、言葉にして感情を表現することで、自分自身のケアにも繋がると思っています。

久保:今回の講座も自分自身をケアする時間になると良いですよね。共通の課題書籍を読みながら進めていく形ですが、普段から本を読んでいる方でなくても問題ないでしょうか。

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三宅:もちろん大丈夫です。本を読んで感想を書くのはきっかけの一つなので、本を読めない場合は最近の出来事などを書いていただく形でもOKです。

久保:講座内ではどのような形でフィードバックされるのでしょうか。

三宅:普通の文章講座と違って、今回は言葉にする、言語化するという点に焦点を当てています。こうしたら伝わりやすい、というよりも、例えばこの辺はもう少し考えていることがあるのではないか、ここをもう少し書いたらより言語化できるかもしれない、などの視点でお伝えできればと思います。こういうことも書いていいんだ、という発見があったら嬉しいなと思いますね。

久保:ありがとうございます。最後に三宅さんから、どのような方に来ていただきたいかお伝えいただけますでしょうか。

三宅色々な人と話してみたい、でも自分は話すのが上手くないと感じている方にぜひ来ていただきたいなと思います。普段だと自分のことを話すのに躊躇してしまう方に、何でも話して良い場だと思って来ていただけると嬉しいです。


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三宅香帆(みやけ かほ)
文芸評論家。京都市立芸術大学非常勤講師。

1994年高知県出身。京都大学文学部卒。京都大学人間・環境学研究科博士後期課程中途退学。リクルート社勤務を経て、2022年に独立。
エンタメから古典文学まで、評論や解説を幅広く手がける。“働きながら本が読める社会をつくる”をミッションに、読書や物語の魅力について発信、講演を続けている。
著書『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』他多数。

SNS(IG/twitter):@m3_myk


久保彩(くぼ あや)
株式会社フライヤー  執行役員CCO(Chief Customer Officer) 
カスタマーエンゲージメントDiv ゼネラルマネジャー

大学卒業後、大手メーカーにてシステム開発の企画・開発・PJマネジメントに携わる。その後、総合系コンサルティング・ファームで大手企業の新規事業/新規サービスの企画・立上・展開を担いながらMBAを取得。2020年よりフライヤーの新規事業担当 執行役員に就任。読書の新しい価値を追求するコミュニティflier book labo、本から深く学ぶflier book camp企画運営責任者。
2023年1月よりカスタマーサクセス責任者兼務。
2024年3月よりCCO就任。


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