フライヤーが主催するオンラインコミュニティflier book laboでは、さまざまな会員限定サービスを提供しています。その魅力をちょっとだけ体験していただける無料のランチタイムセッションが、2024年9月6日に開催されました。

ゲストスピーカーは、オンライン講座「flier book camp」で講師を務めてくださる戸谷洋志さんです。戸谷さんが10月より担当する講座は、題して「友情を哲学する〜はじめての哲学〜 」。

今回のセッションでは、株式会社フライヤーで「flier book camp」企画運営を担当する久保彩のファシリテーションで、プログラムの内容を先取りしてご紹介いただきました!


【スピーカー】

立命館大学准教授     戸谷洋志 氏
株式会社フライヤー 執行役員CCO    久保彩 氏

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※募集〆切:9/25(水)

大人が「友情」について考える意義とは?

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久保彩氏(以下、久保):今回のセミナーや講座のテーマは「友情」ですが、まずは大人にとって友情を考える意義についてお伺いできればと思います。

戸谷洋志氏(以下、戸谷):子どもの頃って自然と友達ができていきますよね。でも子ども時代の友情関係って同い年の人間たちが集まって長い時間一緒にいる、特殊な環境で作られていく関係だと思うんです。例えば高校生から大学生、大学生から社会人になると生活環境はガラッと変化しますよね。社会人でも30代、40代と年齢が上がっていくと置かれている環境は変わっていき、その環境の変化によって友情のあり方も当然変わっていく。
でも私たちは普段、「そもそも友情とは何か」「誰かと友達であることにどういう意味があるのか」について改めて考えることってないと思います。だからこそ、当たり前だと思っていて言語化されていないところを言語化していく、自分でも意識していない部分を意識できるようにしていくことが「哲学的に友情を探求する意義」になるかなと思います。

久保:なるほど。子ども時代と社会人になってからの友達の作り方ってなぜこんなに違うのだろうと思っていましたが、そもそも環境の違いがあって、それによって友情ができるプロセスも全然違ってくるということなんですね。確かにそういうのって言語化したことないですね。

戸谷:そうなんですよ。一方で、友情について考えるってすごく難しいテーマだとも思っています。普段雑談をする相手って大体友達ですよね。でも友達と「本当に友達って必要?」という話はできないですし、友達がいない人は誰ともその話ができない。そう考えると、友情について議論する機会自体がほとんどないのかなと思います。だから今回の講座は友情について考え直す非常に貴重で面白い機会になるんじゃないかなと思っています。

久保:誰しも友人関係の経験は持っているという意味だとみんなで話しやすいし、議論しがいのあるものですよね。

戸谷:皆さん一人一人が多様な友情の経験をしていると思うんですよね。それを持ち寄って話し合っていただく中で、共通する何か、友情の本質的なものが見えてくるととても盛り上がりそうだなと思っています。

「友情」について考えるための、3つの問い

久保:今回の講座で友情について考える際に、どんな問いを議論することになるのか、教えていただけますでしょうか。

戸谷:全4回で構成しているのですが、それぞれの回で1人ずつ哲学者を紹介していき、最後は漫画作品を手がかりに皆さんに発表していただく形をとります。具体的にどういう問いかと言うと、まずDAY1では「本当の友情とは何か」について考えていきます。

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久保:いきなり本質に切り込んでいくんですね。

戸谷:何を意図しているかと言うと、例えばビジネスパートナーと友達のような関係になることってありますよね。でもビジネスパートナーとの友情は、ある意味利害関係に基づいた、ギブアンドテイクの関係ありきの友情だと思うんです。果たしてギブアンドテイクがあることは友情にとって必要なのか。仮に自分にとって何のメリットがなかったとしても相手と友達になることができるのかどうか。そんな風に、そもそも友達になるとはどういうことか、それによって自分の人生にどんな意味があるのか、ということを初回で考えていきたいと思っています。

久保:なるほど。その問いをいただいただけでモヤモヤしますね。

戸谷:そのモヤモヤが哲学にとっては結構大事で、モヤモヤが生じた時は哲学の入り口に立っているんです。
次のDAY2では、「友達とわかり合うことができるか」という問いについて考えます。例えば友達が挫折を経験している時にどんな言葉をかけるかってすごく難しいですよね。「辛いよね、わかるよ」と共感を示してあげるのか、「君の気持ちはわからないけど、僕はいつでも仲間だから」と言ってあげるのか、結構大きな違いですよね。そういった友達への理解し方の違いが友情関係にどんな変化をもたらすのか、ということも考えていきたいと思っています。

久保:なるほど。そしてDAY3は「女性の友情とは何か」というテーマですね。

戸谷:そうですね。DAY1ではアリストテレス、DAY2ではニーチェという非常に有名な西洋の哲学者を紹介するんですけど、この2人は友情を男性的な関係として捉えているんです。それに対して、DAY3で紹介するボーヴォワールという女性の哲学者は、現在のフェミニズムの基礎を作った方で、男性同士の友情とは全く違った女性の友情があることを訴えているんです。女性の友情がどういった形で形成されているのか、その延長線上で男女の友情は可能なのか、についても考えていきたいと思っています。

それぞれの友情のエピソードを持ち寄り、人間関係について捉え直そう

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久保友情について考えることは、人間関係を捉え直すことにも繋がりますよね。仕事でも人間関係に悩むことって多々ありますし、人間の悩みはほとんど人間関係であるとも言われています。そこをみんなで考え直すことで、自分だけじゃないんだと少し楽になったり、安心できたりしそうですね。

戸谷:そうですね。契約を結んで友達になるわけではないので、友達だからこうしなきゃいけない、友達なのにこうしてくれないのは何でだろう、というような空気を読み合う息苦しさが生まれやすいのが友情関係だと思います。それを概念によって整理していくことで、自分で踏ん切りをつけられるようになったり、あの時の自分はこんなことに悩んでいたんだと再発見できたりすることもあると思います。

久保:時々理想の友情や人間関係を掲げて、そうでない自分に落ち込んでしまったり、期待が裏切られて変に傷ついてしまったりするんですが、今回の講座で色々な思想を取り入れながら、自分が割り切る部分や見極める部分を見つけていくとすごく勇気づけられそうだなと思います。

戸谷:一体なぜ人間に友達がいるのかと考えると、やっぱり人間が一人では生きていけない存在である、傷つきやすさを抱えていて他者からのケアを必要とする存在だからだと思うんですよね。契約に基づいているわけではないからこそ臨機応変に対応できるし、どんな場所でも作ることができるし、最悪の状況の中でも最後まで頼ることができる存在になり得る。人間関係のセーフティネット、人間の本質に関わるような関係性なのかなと思いますね。
そして私たちの人生の状況の変化に対応して、少しずつ形を変えながら最後までついて回る問題だと思うので、哲学的に考えていくとすごく面白いテーマだと感じています。

久保:ありがとうございます。今回は漫画を取り扱ったり、戸谷さんのご著書である『友情を哲学する』を章を区切って読んだりと、哲学がまだよくわからない方も入口としてご参加いただけるのかなと思います。最後に、どんな方と一緒に4ヶ月過ごされたいかお伺いできますか?

戸谷:「友情とは?」と聞かれると、パッと答えられない人の方が多いと思うのですが、皆さんこれまでの人生の中で友達との様々なエピソードがあると思うんですよね。それをたくさん持ち寄っていただいて、みんなで語り合いながら考えを深めていけたらいいなと思っています。友情についてモヤモヤ経験がある方、でもそれをこれまで誰かとしっかり話したことはそんなになかった、という方にぜひご参加いただきたいなと思っています。

久保:そうですね。ビジネスの現場でもこれまでより対話が重要視されている中で、曖昧な考えや感情をどうやって整理して言語化していくのか、伝えていくのか、そんなプロセスや言葉の使い方なども学べる機会になると思いますね。


▼セミナー全編はこちらから💁
https://youtu.be/IO1L98D8roI 

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※募集〆切:9/25(水)


戸谷洋志(とや ひろし)
1988年生。立命館大学准教授。追手門学院大学特任助教、大阪大学特任助教、関西外国語大学准教授を経て、2024年より現職。2019年、大阪大学大学院文学研究科にて博士後期課程を修了。博士(文学)。ハンス・ヨナスを主要な対象としながら、「技術」と「責任」をキーワードに研究を行う。一方で、教育・社会連携活動として、哲学対話・哲学カフェにも携わる。著書に『Jポップで考える哲学』(講談社)『友情を哲学する』(光文社)『親ガチャの哲学』(新潮社)『恋愛を哲学する』(晶文社)など。


久保彩(くぼ あや)
株式会社フライヤー  執行役員CCO(Chief Customer Officer) 
カスタマーエンゲージメントDiv ゼネラルマネジャー

大学卒業後、大手メーカーにてシステム開発の企画・開発・PJマネジメントに携わる。その後、総合系コンサルティング・ファームで大手企業の新規事業/新規サービスの企画・立上・展開を担いながらMBAを取得。2020年よりフライヤーの新規事業担当 執行役員に就任。読書の新しい価値を追求するコミュニティflier book labo、本から深く学ぶflier book camp企画運営責任者。
2023年1月よりカスタマーサクセス責任者兼務。
2024年3月よりCCO就任。


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