湊かなえ原作。
家庭内親子関係ミステリー&ヒューマンドラマ
と言う感じだった。

(以下ネタバレ要素を含みます)

母と娘の固い絆。娘は母を喜ばせようと日々
努力をし、母も喜びを以て受け止める。

やがて娘は結婚しても母を慕い続ける。
妊娠し、自分の身体に生命が宿ったことに
恐怖を感じそれを母に打ち明けた際には
「私もそうだった。でも今、あなたに私の命が
つながることはすごく嬉しい」と励まされる。

とまぁ、ここまではいいのだが。

今度は、自分がされてきた教育を、授かった
自分の子(娘)に対してもそのまま施す。


これもまぁどこにでもある話。

しかし、本作では、

「おばあさまを喜ばすために〜しなさい」

という、執着とまでも思える母への忠誠、奉仕
が露わになり、本人は母親の強権で、時には
感情的なまでに娘の願望を制御しようとする。

就学前の子どもに、「おばあちゃんを喜ばせる
行動を心がけなさい」と言い聞かせ、躾るなど
土台無理である。子どもって欲望のままに行動
するんだから、スーパーやショッピングモール
で欲しいモノを買ってもらえないと、地団駄を
踏む、泣き出すのが定番。

別に幼少期に限らず、それ以降の人生でも
自分のやりたいことを封じて、親や夫の期待、
職場では上司の期待に「だけ」注力する人が
多い気がする。それはいずれ歪みを生み、
この映画のように、家庭内の人間関係を破壊し
時には生命の危険にも関わるようなことが、
起こりうる。

「事実は小説よりも奇なり」とは言うが、本作
に限っては「小説は現実をも説得しうる」と
感じずにはいられない。

かなり重い作品です。
そして、忘れられないセリフがあり、記憶に
とどめたかったので咄嗟に駐車券にメモをした。
紙がなくて。しかも携帯は電源オフなので。

(母→    娘→(娘の)子)「愛している」とは
口には出したけれども

(祖母←母←私)「私」の放ったセリフ。
                            ↓        ↓        ↓
愛されているわけではなく、体裁を整えている
だけだった。