ある平日の夕方、新宿に向かう上り電車の中。
学校帰りの高校生や大学生も多く車内は混んで
おり、僕が乗り込んだ駅では座れる席もなく。

しかし、快速急行で走る列車は、停車駅で乗り
込んでくる客も多ければ、降りる客もまた多い
ので、途中で席が空いた。

そして座った僕の隣には、同じくそれまで立って
いた女性二人。

ぱっと見、60代半ばぐらいだろうか。まもなく
おしゃべりが始まった。

僕は、この日異常気象、じゃなかった起床?で
午前4時に目が覚めてしまい、流石に若干の眠気を
催してきたのでそっと目を瞑った。

しかしそんなことにはお構いなく、二人の御婦人の
話は盛り上がる。

婦人A「(会社に)新しい子が入ったんだけど」
婦人B「そうなのね」
A「辞めたくなったら、『お給料のためだと思って、
我慢するのよ』って」「男の人は、そうやって家族
を養ってきたんだから」
B「そうよね〜」

延々と会話は続いていったようだ。

そのほかの話の内容からすると、どうも訪問介護を
手掛ける福祉サービス業のようだ。

どうなん???この昭和的発想。
今は平成も終わって令和だって4年の12月よ。

ミレニアル世代なんかZ世代なんか、それとも意外と
第二次ベビーブーマーなのか、その「新人」の世代
までは分からんが、この説得はないよね。

僕ならまず、
辛くなったら遠慮せんと言うてね、って。また、
俺も利用者さんからクレームや、気の合わない先輩
からごちゃごちゃ言われたこともあったよ、って。

でも、
喜んでくれる利用者さん、ありがとうって声を
かけてもらえることを励みに、なんとかここまで
来れたと思ってる。

君がうちの会社を選んだのは、誰かに言われて
ここに来たんじゃなくて、まさしく君自身の選択
だったんだろう。君が選んだことは、まさに君の
生き方、人生そのものだ。

もし仮に君が現場で傷つけられるようなことが
あっても、君の生き方にまで傷がつくことはない。

むしろそんな時は、細かいことを気にしすぎて
いないか、自分の成長のための「中身」が充実する
チャンスじゃないかと、心を落ち着けて自分自身と
対話してみてほしい。

その上で、どうしても納得できないとか、やる気が
削がれて立ち直れないって時は、相談してほしい。

君の尊厳や人格までもが脅かされるような事態だと
僕が判断したら、僕は全力で君を守るから。
それが、君を雇い入れた僕の責任でもある。

いかん、先輩トークが、社長トークに
飛躍してもうた・・・。

やがて電車は終点一つ前の駅に着き、彼女たちは
そのまま。僕は降り、地下鉄へと乗り換えて、
皇居前のオフィスビルへと吸い込まれていくので
あった。


参考図書「覚悟の磨き方」池田貴将