【本記事は、OSIRO社のコミュニティ献本企画に参加し、献本を受けて執筆しました】

    同書の「文学は何の役に立つのか」というエッセイを読んだ後の感想になります。

    これまでビジネス書中心でしたが、最近は小説も読むようになりました。
ちょうどそんなときにこの企画があり、「読んでみたい!」と応募させていただきました。

    本書を読む前、私は文学を「心の栄養」くらいにしか思っていませんでした。でも、読み終えた今、その見方が変わりました。そして同時に、「AIと同じ読み方をしていていいのか?」と、ハッとさせられました。

    まず心に残ったのは、「つながり」です。同じ作品を読んでいる誰かがどこかにいると思うだけで、不思議と心があたたかくなります。たとえば最近、私は夏目漱石の作品をよく読んでいますが、職場や身近な友人には同じ本を読んでいる人がいません。でも、あるコミュニティで同じ作品を読んでいる方に出会い、「自分は一人じゃなかったんだ」と嬉しい気持ちになり、本書とリンクする体験でした。また、憧れていた登場人物が自分と同じような悩みを抱えていると知ると、思わず「自分だけじゃなかったんだ」と心がふっと軽くなる。そんな効果が文学にあるのだなと知りました。

    もう一つは、「現代人が文学に“生き方の答え”を求めている」という点です。効率を求められる今、私たちは物語をじっくり味わうのではなく、つい「あらすじ」だけを追ったり、答えを求めたりします。私自身も、じっくり読むというより“把握する”感覚で文学を読んでいることが多いように思います。文字をなぞるだけだと、AIで出来てしまいます。また、表面的な読み方では本書で述べられているような「つながり」や書いた登場人物への共感といった文学の効果も感じにくくなってしまいます。「せっかく読むのに、それでいいのか?」と改めて考えさせられました。

    以上から、登場人物の心の動きや背景にある感情に寄り添いながら味わって読むことの大切さを感じます。平野さんの別の著書『スローリーディングの実践』には、そんな読み方のヒントが書かれていると思いますので、同書を読み、文学の読み方を再認識したいです。また、これからはもっと感性のままに本を味わおう、と強く思いました。 

    本書はAIだったり、クリストファー・ノーラン監督の映画からの考察が書かれていたりと、身近な題材がたくさん取り上げられています。自分の知っている題材を扱った箇所をまずは読み、他のエッセイへ読み広げていく読み方も面白そうです。

    文学の読み方を振り返るきっかけをいただけた本でした。本当にありがとうございました。

【本記事は、OSIRO社のコミュニティ献本企画に参加し、献本を受けて執筆しました】