フライヤーが主催するオンラインコミュニティflier book laboでは、さまざまな会員限定サービスを提供しています。その魅力をちょっとだけ体験していただける無料のランチタイムセッションが、2024年7月16日に開催されました。

ゲストスピーカーは、オンライン講座「flier book camp」で講師を務めてくださる柳瀬博一さんです。柳瀬博一さんが7月より担当する講座は、題して「コンテンツ化する技術〜じぶん新書を企画してみよう〜 」。

今回のセッションでは、株式会社フライヤーで「flier book camp」企画運営を担当する久保彩のファシリテーションで、プログラムの内容を先取りしてご紹介いただきました!


【スピーカー】

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院 教授 柳瀬博一氏
株式会社フライヤー 執行役員CCO 久保彩 氏

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なぜストーリーが必要なのか?

久保彩氏(以下、久保):今回のセミナーのテーマが「ストーリーで自分を表現する方法」なんですが、ストーリーとは一体何なのか、ストーリーを世に出すことに対しての上手・下手の違いとは、ということをまずお伺いできればと思います。

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柳瀬博一氏(以下、柳瀬):今回僕が言っている「ストーリー」というのは、自分自身を物語という形で魅力的に人に伝えるものなんですが、私も久保さんも含めてほとんどの方が悩んだことがあると思うんですよね。

久保:そうですね。私もチームのメンバーと一緒に何かをやろうとなった時に、企画の内容をただ話すよりも、なぜ私がそれに惹かれたのかという自分自身の思いや、なぜ今私たちがそれをやる必要があるのか、という内容を話すのが必要だと思うことがあります。

柳瀬:ご参加いただいている方の中に、「自分自身を理解するために必要」と言ってくださっている方がいるんですが、実はこれが答えの一つなんです。
人間が抽象的なことを考えられるようになったのは、言葉を発明してからだと言われています。言葉がないと、頭の中でモヤモヤしたものはそのまま終わってしまうし、人に伝えることもできないんです。

久保:自分の考えていることを具体的な言葉に置き換えることが必要なんですね。

柳瀬:古代から人類は”日記”という形でそれをずっとやってきたんです。自分が何を考えているのかという中の情報と、自分が経験したことや具体的な行動についての外の情報をテキストにし続ける。まずは日記のように自分自身をテキスト化してみるというのがポイントです。

久保:参加者の方から、「読者は誰ですか?それとも決めなくて良いんでしょうか?誰のためにストーリーを作るべきでしょうか?」という質問をいただいております。

柳瀬:面白い質問ですね。僕はかつて編集者として本や雑誌、WEBの記事を作っていたんですが、マーケティングをする際に、読者は誰なのかという視点は絶対必要ですよね。ただし、何も作っていない状態でマーケティングから入ると大体失敗するんですよ。具体的に言うと、自分でまだ一行も書いたことがない人が、この人に向けてメッセージを届けたいと思ってもまず上手くいかないんです。

久保:自分がブログを書き始めようと思った時に、できれば読まれたいからこういう人に向けて書こう、その人に喜ばれそうなものってこれかな、と書き始めると失敗するということなんですね。

柳瀬:マーケティングから入れる人は、もうお客様がいて次の手を考える、すでに仕事をしているプロの人なんですね。本来必要なのは、「好奇心」と「観察」です。

そして、自分には好奇心がないと思う人がいるかもしれない。でも好奇心がない人間って実はいないんですよ。私はあんまり好奇心がないと思っている人も、可視化・言語化していないだけで、その人なりの好奇心が必ずあるんです。

久保:柳瀬さんがこれまでに書かれた本も、好奇心と観察がポイントなんでしょうか?

柳瀬:そうですね。『国道16号線「日本」を創った道』を書いた時は、国道16号線という道路に妙に興味が湧いて5年前位からずっと調べていました。『親父の納棺』については、父が亡くなった時に納棺師の方のサポートを全部やってみたんです。非常に面白い経験だったのでそれを本にしました。『カワセミ都市トーキョー 「幻の鳥」はなぜ高級住宅街で暮らすのか』も、たまたま都心の川で複数回カワセミを見つけたんです。その時はコロナ禍でどこにも出られなかったので、カワセミ日記を小学生のようにつけ始めた、というだけなんですよ。

まずは自分がたまたま遭遇した出来事に対する好奇心の発露。面白そうと思って観察し日記などに記録する、というプロセスはどこでも変わらないと思っています。それなしで自分をストーリーにしよう、新しい企画を考えようと思っても中身がないので思いつかないんですよ。

魅力的なコンテンツに必要なものとは?

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久保:柳瀬さんの場合は書き手としてのご経験があるからこそ、面白いことがあった時に書くつもりで集中して観察されたと思うんです。でも、書くことに慣れていない方だと、この経験がオリジナルなものなのか、面白いと思ってもらえるのか、ということにまず自信を持てないこともあると思います。人との違いを見出すには何が必要なのか、というところをお伺いできればと思います。

柳瀬:まず、人間は全員が平凡なんです。DNAレベルで言うとほとんど誤差の範囲で、思考もほとんど一緒なので、同じもので共感できるんですよ。その一方で、人間は全員が違う経験をしているんですね。生まれた場所、プロセス、一人として同じ人生を歩んでいないんです。つまり、生まれてから死ぬまでの経験は全部オリジナル、ユニークなんですね。

そして社会に流通しているあらゆるコンテンツは、実はすべてこの人間の平凡さと経験のオリジナリティーの掛け算でできているんですよ。

久保:どんな経験を共有しても、どこかで共感される構図にあるということですよね。それはとても勇気づけられますね。

柳瀬:ここ半年で1番売れている新書の中に、三宅香帆さんが書いた『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』という本がありますね。このタイトルはまさに全員が共感する、誰もが思っていることなんですよ。ところが、読んでみるとわかりますが三宅さんでないと絶対に書けない内容なんです。つまり、誰もが共感できるタイトルで、その人しか経験していないストーリー、そこに法則が組み合わさっていることが必要なんです。

久保:どんな法則なんでしょうか?

柳瀬条件を変えても何度も人間が必ずやってしまう法則性のことです。自分のストーリーを魅力的かつ的確に人に伝えたいという欲望は全員にあるはずなんですね。それをみんなが共感できるようにするには、ある種の法則性やセオリーが練り込まれているかどうかがポイントなんです。

久保:その法則性やセオリーを、自分のストーリーから見つけ出すのが1番難しそうです。

柳瀬:ここで重要なポイントが、先ほどもお話した「観察」なんですね。どこかに出かけるのでも、家の中で何かをするのでも何でもいいんですけど、自分が今興味を持ってやっていることって皆さん必ずありますよね。それに対する観察がほとんどの方はざっくりしているんです。自分しか経験していないことを、色々な角度から徹底的に観察して、記録することが大切です。これをやるだけで、家の近所のコンビニにアイスを買いに行くとか、そんな日常の些細な出来事が面白くなってくるんです。

久保:なるほど。観察によって解像度が上がると、自分の経験がすごく楽しく感じますね。

他者がいるから、自分のストーリーの面白さに気づける

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久保:今回の講座では、世の中の読まれるコンテンツや文章とは、という点を柳瀬さんから教えていただけるということはもちろん、自分が書いたものに対して柳瀬さんから個別にFBをいただけるということにも、とても価値があると思っています。

柳瀬:参加いただいた皆さんには毎回どんどんアウトプットしてもらい、それに対して僕がコメントを入れたり質疑応答の時間を設けたりします。あとは、グループワークでお互いが著者と編集者になってもらいます。お互いに自分の書いたものを読んでもらったり、他の人が書いたものを読んであげたりするんですが、プロじゃない人たちが編集者の役割をやる時は、絶対ダメ出しをしないというのがポイントなんですね。

久保:それは嬉しいですし安心して参加できますね。

柳瀬:むしろ面白いところを見つけてあげて、こうしたらもっと面白くなるだろうというポジティブなアイデア合戦をやります。そうすると、自分でも気づかなかった面白いところが見えてくるんですね。そんな実践をしていきながら、時にはAIを活用するとどういうものが出てくるのか、というところも皆さんと一緒に体験できればと思っています。

久保:ありがとうございます。とても魅力的な場所ですね。最後に、受講を迷われている方への一言や、どういう方に来てほしいか、などがあればいただけますでしょうか。

柳瀬:自分をストーリーにして伝える、というのは1回作っておくと一生使える武器になります。それをお互いに気軽に作れる場所だと思いますし、その先で本書いちゃおうかなという人のニーズにも応えられると思います。少しでもご興味がある方は、ぜひご参加いただければと思います。


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柳瀬博一(やなせ ひろいち)
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授(メディア論)

1964年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、日経マグロウヒル社(現・日経BP社)に入社し「日経ビジネス」記者を経て単行本の編集に従事。『小倉昌男 経営学』『日本美術応援団』『社長失格』『アー・ユー・ハッピー?』『流行人類学クロニクル』『養老孟司のデジタル昆虫図鑑』などを担当。
「日経ビジネスオンライン」立ち上げに参画、のちに同企画プロデューサー。TBSラジオ、ラジオNIKKEI、渋谷のラジオでパーソナリティとしても活動。2018年3月、日経BP社を退社、同4月より現職に。著書に『カワセミ都市トーキョー 「幻の鳥」はなぜ高級住宅街で暮らすのか』(平凡社)、『国道16号線「日本」を創った道』(新潮社)、『親父の納棺』(幻冬舎)、『インターネットが普及したら、ぼくたちが原始人に戻っちゃったわけ』(小林弘人と共著、晶文社)、『「奇跡の自然」の守りかた』(岸由二と共著、ちくまプリマー新書)、『混ぜる教育』(崎谷実穂と共著、日経BP社)。


久保彩(くぼ あや)
株式会社フライヤー  執行役員CCO(Chief Customer Officer) 
カスタマーエンゲージメントDiv ゼネラルマネジャー

大学卒業後、大手メーカーにてシステム開発の企画・開発・PJマネジメントに携わる。その後、総合系コンサルティング・ファームで大手企業の新規事業/新規サービスの企画・立上・展開を担いながらMBAを取得。2020年よりフライヤーの新規事業担当 執行役員に就任。読書の新しい価値を追求するコミュニティflier book labo、本から深く学ぶflier book camp企画運営責任者。
2023年1月よりカスタマーサクセス責任者兼務。
2024年3月よりCCO就任。


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