”賢さ”は、知識の多さでは決まらない
社会人になると、”会話”に対して悩む機会が増加します。「賢い同僚の話についていけない、自分は頭が悪いのでは」「クライアントと何を話していいかわからない、教養のなさを感じる」などといった、明確な問題が起きているわけではないけれど漠然としたモヤモヤを抱えたことがある方は多いのではないでしょうか。
コミュニケーションに苦手意識を感じている方はもちろんですが、自分はコミュニケーションが得意だ、と思っていた方ほどこのモヤモヤに直面している場合が多いようです。
今回は、賢くなりたい・教養を身に付けたいと感じる方に向けて、どうすればそれが身に付けられるのかについてお話しします。
❏ そもそも教養ってなに?
教養を身に着けるために、まず教養とは何かについて考察していきます。
教養ということばの意味
知覚できる世界を広げる
”教養”という言葉に対し、幅広く知識を知っている、会話が途切れない、といった具体的なイメージを持つかもしれません。
しかしながら、大学教育などの中で重要視されている”リベラルアーツ(教養教育)”は、元来、人々を束縛から解放し生きるための力を育むことを目的としています。考える力や考えるための材料がないと、人々は特定の考えに束縛され、物事を深く理解することができないためです。
また、『人間にとって教養とはなにか』を執筆された橋爪大三郎氏は著書の中で「教養は、自分の狭い範囲を越えていくためにある」と言及しています。すなわち、教養とは自分の思考の枠を越え、知覚できる世界を広げていく能力のことを意味します。
教養と「無知の知」
知覚できる世界を広げるためには「自分が何を知っていて何を知らないのか」について理解する必要があります。
ギリシャの哲学者ソクラテスは「無知の知」という概念を生み出し、自分が何も知らないことを知るところから思考を始めようとしました。人間は自分が何も知らないことを理解することで、より何かを知りたいと思うことができます。ソクラテスは、そうして自らの思考の枠を越えていこうとしました。
教養とは「無知の知」から始まり、様々な視点を得ることで身に付いていくのです。
どんなひとが「教養がある」と感じる?
”教養”という言葉について考察してきましたが、一般的にはどんな人が教養があると思われているのでしょうか。
①いろいろなことを知っている
話の引き出しを沢山持っている人に対し、教養の高さを感じる人が多いようです。しかし、知識を増やすことを目的とせず、視点を増やすことで本当の意味での教養が身に付きます。
②知らない部分を理解している
自分が知らない物事の本質部分を理解している人に対し、教養の高さを感じるようです。一つのことを深く考え、洞察することで知らない本質部分を理解することができます。
③知らなくても議論に参加できる
知識がなくても話に参加できる人に対しても教養の高さを感じるようです。知識ではなく、様々な視点から物事を捉えることが大切です。
社会人が身につけるべき教養とは
教養とは自分の思考の枠を越え、知覚できる世界を広げていく能力であり、無知であることを知って視点を増やしていくことだとお話しました。
仕事の場であれば、自分だけの視点ではなく上司、自社、クライアント、業界としての視点など、様々なスタンスで物事を見ることを意識しましょう。繰り返しとなりますが、知識をとにかく増やすのではなく、視点を増やすこと。未知に触れ、それが何故そうなっているのかを知ろうとすることで、おのずと教養は身に付いていきます。
❏ 教養の身につけ方
では、どうすれば”視点”を増やし、教養を身に付けることができるのでしょうか。具体的かつ身近な手法をご紹介します。
人の話を聴く
学びの機会は日常にも転がっています。誰かの話を聞くと、最も簡単に新しい視点に触れることができます。なぜ相手はこの発言をしているのか考えながら聴くと、気づきが増えるかもしれません。
人に話す
人の話を聴くことと同じくらい、人に話すことも重要です。自分の考えを伝え、他者との違いを感じることで自分が持つ視点をメタ的に理解することができます。
また、いつも同じ人と会話をしている人も多いかもしれませんが、なるべく違った考えを持った人に話すことで教養はさらに磨かれていきます。
旅行をする
普段とは違う場所へ行くことも効果的です。国内でも海外でも、いつもとは異なる環境へ行くことでまったく違った視点を得ることがあります。
例えば、日本では「他人に迷惑をかけてはいけない」という価値観が根強く存在しますが、インドでは「自分は他人に迷惑をかけているのだから、他人のことも許す」と考える方が主流です。環境が変わると、まったく逆の思考を経験できるかもしれません。
本を読む
本は、誰かの視点で書かれています。本を読むことで、これまで自分が知らなかった考え方や価値観に触れることができます。ただ読むのではなく本には誰かの視点で見た世界が書かれていると意識しながら読むと、学びが深まります。
flierによる、おすすめの書籍を一冊ご紹介します。
▸ 人生を面白くする 本物の教養
ライフネット生命元CEOの出口治明氏による、教養についての決定版。時間・歴史軸である「タテ」と空間・世界軸である「ヨコ」の二次元で物事を捉える、出口氏の”視点”を授けてくれる一冊です。
https://www.flierinc.com/summary/692
映画を見る
映画を見ることも、本と同様に自分と違う考えに触れることができます。本とは違い、様々な登場人物の視点を直感的に体験することができます。読書が苦手な方は、映画を見るところから教養を身に付けてもいいかもしれません。
また、本や映画で感じたことを誰かに話すことで、より一層深い学びが得られます。
❏ 教養はどこで身につく?
必要なのは他者との会話
教養は一人で身に付ける部分もありますが、会話の中でしか磨かれない部分が多分にあります。他者との関わりの中でしか気付けない視点があるためです。
人間は他者との関係性の中で存在しており、関係性が変われば考え方も変わります。様々な人との会話を通じ、視点を育んでいきましょう。
あまりに共通の話題がなさすぎても会話にならない
そうはいっても「会話が盛り上がらないから教養を身に付けたい」と感じている方も多いと思います。会話とは、共通点を探り、作っていくことで続いていきます。共通の話題を探すところから始めてみましょう。
具体的なおすすめの場所
研修会などで参加者と話す
仕事上の研修や、勉強会などは違った考えを持つ人と話す絶好の機会です。ある程度の共通の話題があり、会話を始めやすいためです。緊張するかもしれませんが、一歩踏み出してみましょう。
オンラインサロンに参加する
最近では、特定の目的のもとにオンライン上で集まるコミュニティ・オンラインサロンが増えてきています。業界・年齢もバラバラな人たちと会話し、様々な視点を取り入れる場として非常に有効です。
❏ まとめ
教養は、社会人からでも十分に身に付けることができます。そのために必要なたった一つの観点は「物知りになろうとするのではなく、自分が知らないということを知ること」です。そして、そこからたくさんの視点を取り入れることで、教養を磨いていきましょう。
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